生前贈与による不動産の名義変更

生前贈与とは被相続人が死亡する前に自身の意思で相続人等に財産を渡すことを言います。

被相続人が死亡して相続人が財産を譲り受ける相続とは区別されます。自分の財産を、生前に贈与することによって、将来負担すべき税金(相続税)を押さえるために利用される事もあります。

生前贈与のメリット

  • 譲りたい方に、譲りたい物を確実に譲ることができる(相続時の紛争の予防)
  • 相続の場合と異なり、自分の贈与した物が、どのように利用されるかを確かめることができる。
  • 贈与の方法によっては、相続税対策となる。

しかし、何も手続きをせずに生前贈与を行うと、相続税よりも税率の高い贈与税を支払うことになります。そのため高い贈与税の支払いを防ぐために、贈与税が非課税となる制度や、贈与の税率が軽減される制度を利用するのが一般的です。

この制度のうちもっとも有名なのが「相続時精算課税制度」と「夫婦間の贈与特例」なのです。

生前贈与を行う際には、これらの制度の内容や利用方法、自身の財産状況をしっかりと把握し、うまく活用する必要があります。場合によっては、税理士などの専門家に相談することも有効な方法のひとつです。

※ 財産を相続した者が、被相続人の死亡前から3年以内に生前贈与を受けていた場合、その生前贈与された財産については相続税の課税財産に取り込まれることになります。ただし、この制度は、相続・遺贈によって財産を取得した者が対象となるため、それ以外の人には適用されません。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度を利用すると、相続のときには、贈与された財産と、相続または遺贈された財産を足した額に相続税がかかります。ただし、支払った贈与税は、相続のときの相続税から控除できます。ですから、税金を二重に払うようなことはありません。

この制度を別のいい方をして説明すると、生前の贈与はなかったものとされ、再度相続税を計算し直すということです。サラリーマンの給料に置き換えるならば、生前に支払った贈与税は給料から天引きされる源泉税のようなものであり、再度相続税を計算し直すことは年末調整をするようなものです。

相続時精算課税制度の適用対象は、65歳以上の親から20歳以上の子供への贈与に限られています(子供が亡くなっているときには20歳以上の孫を含む)。

相続時精算課税制度の適用は、贈与財産の種類、贈与財産の価額(金額)並びに贈与回数に関する制限はありません。なお、贈与によって取得したものとみなされる財産(みなし贈与財産)も適用対象となります。みなし贈与の場合、当人が贈与されたと知らなかったケースも多々ありますが、申告期限までに気づけば相続時精算課税制度が利用できるということになります。

生前贈与に関する税金

生前贈与は相続開始前の3年以前のものは相続税には影響しません。

贈与税の基礎控除額(110万円)を利用して、贈与税が発生しない程度の不動産持分を毎年移転するなど、贈与税がかからないように贈与を行うこともできます。

他にも、居住用不動産等を配偶者(婚姻期間20年以上)へ贈与する場合には、一定の要件を満たせば、配偶者控除(最高2,000万円まで)を受けられます。この贈与された不動産等は、特定贈与財産と呼ばれ、相続税の課税価格にも加算されません。