外国人の方が日本の不動産を売買することも今では珍しくありません。外国人の方が日本の不動産を取得することに法律上の制限はないため、外国人の方でも自由に日本の不動産を売買することができます。
外国人の方が不動産を売買する場合、日本に居住しているのか、海外に在住なのかなど外国人の方の状況によって、必要な書類が異なったり、他にも手続きが必要になったりします。
ここでは、外国人の方が日本の不動産を売買するときの登記手続きについて説明します。
目次
日本の不動産登記制度
日本には、不動産の権利関係を公示するための不動産登記の制度があります。
この不動産登記には、「誰が不動産を所有しているのか」「抵当権などの権利の対象となっているのか」などの権利関係が記録されています。
不動産登記制度は国ごとに異なり、その効力や重要性も違うため、外国の方には「なぜ日本では登記が重要なのか」理解できないこともあるようです。
日本の不動産登記制度では、不動産の売買があったとき、不動産の所有権が移転したことを登記しておかないと、第三者に対して「不動産が買主のものになった」ことを主張することができませんし、売主が他の人にも二重に不動産を売ってしまったときは、先に登記をした当事者が優先されることになります。
ですから、不動産売買をしたときに、登記がきちんとできるかどうかは非常に重要なことなのです。
不動産登記が確実にできるよう、通常不動産取引の際に私たち司法書士が立会い、登記が確実にできることを確認して初めて売買代金の決済が行われています。
不動産登記の手続き
不動産の売買から不動産登記申請までの流れは次の図のとおりです。
不動産を売買による所有権移転登記の必要書類
- 不動産売買があったことを証する登記原因証明情報
- 買主の住所を証する書面
- 売主の登記済証または登記識別情報
- 売主の印鑑証明書
- 売主と買主から司法書士への登記申請の委任状
- 固定資産評価証明書
一般的に必要な書類は上記のとおりですが、書類については外国人の方特有の問題がありますので、以下に説明します。
日本に居住している外国人の場合
ここで日本に居住しているとは、在留資格を持って中長期間日本に滞在できる方です。例えば、日本人と結婚されている方や日系人の方、日本国内で会社にお勤めの方や会社を経営している方、永住者の方のことです。
短期滞在の方の場合は、海外に居住している場合をご覧ください。
不動産を購入するとき
日本の不動産を購入するとき、登記の際に住所を証する書面が必要になります。中長期間の在留資格を持つ外国人の方は、外国人住民票を入手することができますので、住所を証する書面として外国人住民票を添付します。
また、ローンを組むときには、抵当権設定登記のために印鑑証明書も必要になりますが、これも印鑑を登録すれば入手することが可能です。
不動産を売るとき
不動産を売るとき登記手続きで印鑑証明書が必要です。中長期間の在留資格がある外国人の方は、住民票がある自治体で印鑑登録をすることができますので、印鑑証明書の交付を受けることができます。
ただし、印鑑を使う習慣の無い方で印鑑登録をしていない場合は、本国官憲(在日大使館・領事館や本国の官公署)が発行する署名証明書を代わりに使うことになります。
このように外国人の方でも日本に居住している場合は、不動産売買による登記手続き自体は日本人の方と変わることはありません。
日本に長く居住していて日本語の会話には不自由しない方でも、日本語の読み書きは苦手という方は多いようです。そういう方の場合、売買契約から登記まで内容がよく分からない書類に署名や押印することに不安を感じるのではないでしょうか。
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズでは、外国人の方が不動産を売買するときのサポートもしております。お気軽にお問い合わせください。
海外に居住している外国人の場合
海外に居住している外国人の方の場合、日本に住所があるときのように住民票や印鑑証明書が出ないのがほとんどです。そのため、代わりの書類を用意することになります。
日本の不動産を購入するとき
不動産を購入して登記をするには、住所を証する書面が必要となります。
日本には住民票がありますが、これに類似する制度がある国は限られています。そのため、そのような制度がない国では、在日大使館・領事館または本国の公証人の認証による宣誓供述書をもって住所を証する書面とするケースが多いでしょう。
住所を証する書面としての宣誓供述書には、本人の特定及び本人の住所がどこであるかが記載されていることが必要です。
非居住者の方が日本国内の不動産を取得したときは、取得の日から20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に報告(「本邦にある不動産またはこれに関する権利の取得に関する報告書」)を提出する必要があります。
ただし、次の場合は報告する必要はありません。
・非居住者が、当該非居住者または親族もしくは使用人の居住用、当該非居住者の事務所用、非営利目的の業務用に供するため行った本邦不動産またはこれに関する権利の取得
(セカンドハウスや別荘はここでいう居住用には含まれません)
・他の非居住者からの本邦不動産またはこれに関する権利の取得
非居住者の方が日本国内の不動産を購入した場合、不動産取得税や固定資産税について「納税管理人」を置くことが原則として必要になります。
日本の不動産を売却するとき
日本の不動産を売却すると、登記の際に印鑑証明書が必要です。
しかし、印鑑証明書を発行してもらえる国は限られています。そのため、印鑑証明書が無い国に居住している場合は、署名証明書をもって印鑑証明書の代わりにします。具体的には、登記の委任状に署名をし、この署名が本人のものに間違いないことを在日大使館・領事館または本国の公証人に認証してもらったものを使います。
非居住者の方から不動産を購入した場合、買い主の方が代金から源泉徴収して税金を納めなければならないケースもあります。納付義務は買い主にあるので、忘れることがないように非居住者から不動産を買うときは源泉徴収義務について確認してください。
別サイトに記事を書いています→非居住者が不動産を売却するときの代金から源泉徴収の要否と手続き
外国法人であるとき
法人が不動産の売買による登記申請をするとき、上記で説明した住所を証する書面や印鑑証明書に加えて、代表者の資格を証する書面が必要になります。
外国法人でも日本に営業所を設置して、その旨の登記をしているときは、日本で会社の登記事項証明書が取得できるので、特に問題になることはありません。
しかし、日本に営業所を置いていない会社の場合、代表者の資格証明書を取得しなければなりません。本国で公的な証明書が出ればそれを使い、出ないときは、在日大使館・領事館または本国の公証人の前で宣誓供述し資格証明書とします。
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズのサポート内容
司法書士は不動産登記の専門家です。
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズは、外国人の方の不動産売買について、次のようなサービスを提供しています。
- 不動産登記の申請代理
- 不動産売買の代金決済の立会い
- 取引当日来られない当事者の本人確認のための海外出張
- 登記関係書類を外国語で作成または翻訳(英語・中国語対応、その他の言語はお問い合わせください)
- 売買契約書や重要事項説明書の翻訳
- 日本の不動産法制度の説明
- 納税管理人の引き受け
司法書士の先生方からもお問い合わせやをいただき、外国人当事者との連絡や、書類作成、外国人当事者の代理人として登記申請をお手伝いさせていただくこともあります。
お気軽にお問い合わせください。
最近、不動産の仲介業者の方から、外国人の不動産取引について
- 初めての非居住外国人の取引で不安
- 当事者が日本語を理解しないので重要事項説明や契約に不安を感じている
- いつも依頼している司法書士が非居住外国人が当事者となる場合の登記書類や手続きに慣れていない
などのお問い合わせをいただくことが増えています。
せっかくの機会なのに、外国人という理由だけで取りこぼしてしまうのは、もったいないことです。
また、取引の仲介を引き受けたものの、外国と日本の不動産の取引慣行の違いを説明しきれず、途中で暗礁に乗り上げてしまうことも実際に起きており、日本人同士の取引とは違った注意が必要になります。
外国人のとの取引に精通した仲介業者と連携される方がスムーズに進むこともあり、そういう場合は、当事務所のネットワークを活かして連携の橋渡しをすることもできます。
まずはお問い合わせください。
不動産の売買による所有権移転登記では、法律の規定により、司法書士には本人確認をすることが義務づけられています。ご協力をお願いいたします。