「出入国在留管理基本計画が2026年7月に策定された」というニュースを見て、外国人を雇用している会社や、これから外国人の採用を検討している会社にとっては、自社の在留資格や雇用の手続きへの影響が気になるところでしょう。この計画は、法律や制度がその日から一斉に変わる改正一覧ではなく、今後の出入国在留管理行政の方向性を示す行政計画です。このページでは、計画の全体像から、在留資格・外国人雇用・永住許可・JESTA(電子渡航認証制度)・育成就労制度への影響まで、確定した事項と今後の予定・検討事項を区別しながら整理します。
目次
出入国在留管理基本計画とは
出入国在留管理基本計画とは、外国人の入国及び在留に関する施策の基本方針として、入管法(出入国管理及び難民認定法)第61条の9に基づいて法務大臣が定める行政計画です。2026年7月に策定された今回の計画は、2019年4月策定の第一次出入国在留管理基本計画に続く「第二次出入国在留管理基本計画」にあたります。
ここで押さえておきたいのは、この計画自体は法律の改正そのものではないという点です。計画に書かれている内容には、既に法律改正や運用として実現しているもの、時期を決めて今後実施される予定のもの、まだ検討段階にとどまっているものが混在しています。同じ「計画に書かれている施策」でも確定の度合いはまったく異なるため、読み進める際は常にこの3段階を意識する必要があります。
今回の計画は、2026年1月に取りまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえて策定されました。背景には、2025年の外国人入国者数が4,000万人を超えて過去最高となり、2025年末の在留外国人数も約413万人(総人口の3.35%)に達した一方、不法残留者数は2026年1月1日時点で約6.8万人と下げ止まりの傾向にあるという状況があります。外国人材の受入れを進める一方で、適正な管理と共生社会づくりをどう両立させるかが、この計画全体の問題意識になっています。
今回の計画の全体像:受入れ拡大と管理強化を両立する6つの方針
今回の出入国在留管理基本計画は、次の6つを基本方針として掲げています。
| 基本方針 | 内容 |
|---|---|
| ①厳格かつ円滑な出入国管理 | デジタル技術等を活用した厳格かつ円滑な出入国審査の推進 |
| ②適正な在留管理 | 本邦に在留する全ての外国人について適正な在留管理を実施 |
| ③秩序ある共生社会の実現 | 受け入れた外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた環境整備 |
| ④不法滞在者対策 | 厳格かつ適正な退去強制手続の効果的な実施、不法滞在者等への対策強化 |
| ⑤難民等の保護 | 難民及び補完的保護対象者等の適正かつ迅速な保護、適切な支援の実施 |
| ⑥受入れの在り方の検討 | 社会構造や経済活動の変化を踏まえた、外国人受入れの基本的な在り方に関する検討 |
外国人を雇用している会社や、これから雇用を検討している会社に特に関係が深いのは、②の適正な在留管理、③の受入れ環境整備、そして④の不法滞在者対策です。在留資格の実態確認の強化、永住許可制度の見直し、外国人が安心して働ける情報発信・相談体制の整備などが、この後の各論点として登場します。
①の出入国審査や⑤の難民等の保護は、主に空港での入国審査や難民認定手続に関する内容です。⑥は「今後、外国人をどこまで・どのように受け入れていくか」という、より長期的・構造的な検討にとどまるもので、この計画の時点では具体的な制度設計までは示されていません。
在留資格・外国人雇用に関係する変更・方針
ここでは、外国人を雇用している会社に特に関係が深い、在留資格・雇用管理まわりの変更・方針を、確定事項と予定・検討事項を区別しながら見ていきます。
在留管理のDX化とマイナンバー連携(2027年から運用開始予定)
出入国在留管理庁は、公共サービスメッシュを活用したマイナンバーによる情報連携を、2027年から運用開始する予定です。運用が始まると、出入国在留管理庁は関係機関から国民健康保険料や国民年金保険料の納付情報、地方税の課税情報、医療保険の被保険者資格情報などの提供を受けられるようになり、逆に関係機関に対しては国籍や在留資格に関する情報を提供することになります。
この情報連携の主な目的は、在留資格の更新審査などの際に、税金や社会保険料をきちんと納めているかどうかを、より正確かつ効率的に確認できるようにすることです。従業員本人の納税・社会保険の状況が、これまで以上に在留資格の審査に反映されやすくなると見込まれるため、外国人従業員を雇用する会社としては、給与から天引きする社会保険料・住民税の手続きに漏れがないか、あらためて確認しておきましょう。なお、地方税の納税情報の連携や生活保護等に関する情報提供は、現時点ではまだ検討段階です。
特定在留カード(在留カードとマイナンバーカードの一体化)が2026年6月から運用開始
在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード」が、2026年6月から運用開始されています。これまでマイナンバーカードを持つ中長期在留者は、在留カードの手続きを地方出入国在留管理官署で、マイナンバーカードの手続きを市区町村で、それぞれ別々に行う必要がありました。特定在留カードの交付を受けると、この2つの窓口を別々に回る必要がなくなります。
出入国在留管理庁は、今後、全ての在留外国人が原則として特定在留カード等を取得できるよう、オンライン申請への対応を含めたシステム改修を検討していく方針です。雇用主側で現時点で特別な手続きが必要になるわけではありませんが、従業員から切り替えについて相談があった場合は、通常の在留カードの手続きと同様に対応して差し支えありません。
「技術・人文知識・国際業務」・留学生の実態把握強化
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ人が、専門的な技術や知識を必要としない現場業務に従事しているケースが確認されていることを踏まえ、出入国在留管理庁は、対象となる業務範囲についての案内充実を含め、在留審査の運用改善に取り組む方針です。今後は、マイナンバーによる情報連携にあわせて所得情報も活用しながら、より的確かつ厳格な審査の実施を検討するとされています。
留学生についても、資格外活動許可で認められている週28時間以内のアルバイトという制限を超えて働く違反が課題とされています。日本語教育機関と連携した実態把握・指導は2026年4月から既に始まっており、今後は複数の稼働先で資格外活動を行っている留学生を、外国人雇用状況届出やマイナンバー情報連携を通じて特定する仕組みの検討が進められる予定です。
技術・人文知識・国際業務の資格で雇用している従業員に、専門性を要しない現場業務を担わせていないか、留学生アルバイトが週28時間の上限を超えていないかは、今回の計画を機に、あらためて自社の雇用実態を確認しておきたいポイントです。
「経営・管理」ビザは2025年10月に基準見直し済み
外国人が会社の経営者・管理者として日本に在留するための在留資格「経営・管理」については、この計画で新たに基準が変わるわけではなく、2025年10月16日の上陸許可基準の見直しにより、資本金・出資総額や常勤職員の雇用、日本語能力などの要件が既に厳格化されています。今回の計画では、見直し後の運用を徹底する方針が示されており、事業の実態に疑いが持たれる事案への実態調査や、国税庁との情報連携拡充による納税状況の確認強化を、今後さらに進めます。
経営管理ビザの具体的な要件や経過措置については、以下のページで詳しく解説しています。
特定技能制度の適正化(2027年4月〜支援体制の要件厳格化等)
在留資格「特定技能」についても、支援体制の要件見直しが進められています。1号特定技能外国人への支援は、受け入れ企業(特定技能所属機関)が自ら行うか、登録支援機関に委託するかを選べる仕組みですが、2027年4月からは、支援責任者に養成講習の受講を義務づけることや、常勤の支援責任者を選任すること、支援責任者・支援担当者1人が担当できる対応数に上限を設けることなどが予定されています。あわせて、登録支援機関の登録要件の厳格化や、特定技能2号への日本語要件の追加も進められています。
自社で支援を行っている会社は支援責任者の要件・養成講習への対応を、登録支援機関に委託している会社は委託先が新しい要件を満たし続けているかを、2027年4月に向けて確認しておくと安心です。あわせて、受入れ状況や転籍状況の把握強化も継続される方針であるため、受入れ人数の見込みや報告事項に変更がないか、随時最新情報を確かめておきましょう。
永住許可はすぐ厳しくなる?
結論から言うと、日本語能力や制度理解プログラムの受講を新たな確定要件とすることが、この計画で決まったわけではありません。2026年7月時点では、永住許可制度に関するいくつかの見直しが「検討」の段階にとどまっています。
既に確定している内容は、2024年の入管法改正によるものです。この改正で、永住許可の要件である「日本国の利益に合する」の判断基準に、入管法に規定する義務の遵守や公租公課(税金・社会保険料等)の支払いが明記され、これらを適切に履行していない場合には、永住者の在留資格を取り消せるようになりました。公租公課の履行状況は、永住許可申請の際にもともと厳格に確認される事項であり、2024年改正で許可後の取消事由としても明確化されました。ただし、取消事由に該当する場合でも、定着性に配慮し、引き続き在留することが適当でないと認められる場合を除いて、法務大臣の職権で在留資格の変更を許可できる仕組みも設けられています。
この計画では、取消事由の判断をより予見可能なものにするため、どのような場合に永住者の在留資格が取り消され得るかを示す具体的な事例をガイドラインに列挙し、周知していく方針を示しています。2024年改正の法案審議で国会が求めた附帯決議を踏まえたものです。
その上で、一定水準以上の日本語能力を有していることや、日本語・日本の制度やルール等を学ぶプログラムの受講を条件とすること、独立生計要件や国益要件の見直しなどが、今後の検討事項として挙げられています。特定技能から永住者へ移行していく可能性を踏まえた許可の在り方の検討も進められる見通しです。これらはいずれも2026年7月の時点ではまだ制度化されておらず、具体的な要件・実施時期は明らかにされていません。永住申請・更新を控えている方は、「検討されている」段階の情報と、実際に施行された制度を混同しないよう注意し、申請前には出入国在留管理庁の最新の公表資料を確認することをおすすめします。
JESTA(電子渡航認証制度)とは?2028年度中の導入予定
JESTA(ジェスタ)とは、査証(ビザ)が免除されている国・地域から日本に短期滞在で入国しようとする外国人などに対し、渡航前にオンラインで渡航目的や滞在先等の情報を提供させ、事前に問題がないかを審査する電子渡航認証制度です。米国のESTA(電子渡航認証システム)に相当する仕組みとして、日本版ESTAとも呼ばれています。
対象となるのは、査証免除の対象国・地域から観光等の短期滞在目的で入国しようとする人や、クルーズ船(指定旅客船)の乗客、乗継ぎのために一時的に日本に入国する人(一部)です。制度の根拠となる法律は、2026年5月の第221回特別国会で成立し、同年6月に公布されました。制度が導入されると、認証または査証のいずれも受けていない人は、原則として日本に入国できなくなります。一方、短期滞在者としての認証を受けている人は、上陸審査時にウォークスルー型のゲートを通過できるようになり、入国審査の待ち時間短縮も期待されています。
導入時期については、出入国在留管理庁が2028年度中の着実な導入を目指してシステム開発を進めている段階であり、2026年7月時点で運用は開始されていません。外国人従業員の出張や、査証免除国・地域から来日する家族・取引先の受け入れを予定している会社は、今後、認証の要否や取得方法についての公式案内が示され次第、渡航前の準備事項として確認しておくとよいでしょう。
育成就労制度は2027年4月開始予定
育成就労制度は、これまでの外国人技能実習制度を発展的に解消し、人手不足分野における人材育成と人材確保を目的として、2024年6月の入管法等改正で創設された制度です。運用開始は2027年4月が予定されており、2026年7月時点では準備段階にあります。
技能実習制度では、国際貢献のための技能移転という制度目的と、実際には人手不足対応の労働力として運用されている実態との乖離が指摘されてきました。育成就労制度は、この課題を解消するとともに、育成就労制度と特定技能制度に連続性を持たせることで、外国人が日本で就労しながらキャリアアップできる、分かりやすい制度体系を目指すものとされています。
運用開始に向けては、育成就労実施者等の指導・監督や、育成就労外国人への支援・保護、相談援助を担う外国人育成就労機構を含めた体制整備が進められているほか、悪質な送出機関・監理支援機関を排除するため、送出国政府との二国間取決め(MOC)に関する協議も継続されています。運用開始後は、地域協議会の活用や地方公共団体との連携を通じて、人手不足の地域で適切に人材確保が行われるよう配慮する方針も示されています。
現在、技能実習生を受け入れている会社は、監理団体が育成就労制度における監理支援機関の要件を満たしているか、2027年4月の制度移行に向けた案内が来ているかを、早めに確認しておきましょう。特定技能制度とあわせて、受入れ状況・転籍状況の把握が継続的に強化される方針であるため、受入れ人数の見込みに変更がないかも注視しておきましょう。
不法滞在・難民認定に関する方針
今回の計画では、不法滞在者対策の強化と、難民等の迅速な保護という2つの方針を、いずれも重要な柱に位置づけています。
不法残留者数は、2014年に過去最低の約6万人まで減少した後、下げ止まりの傾向が続いており、2026年1月1日時点で約6.8万人となっています。これを踏まえ、2025年5月には「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」が、2026年5月にはこれを強力に推進するための追加施策をまとめた「不法滞在者ゼロプラン〜強力推進パッケージ〜」が、それぞれ公表されました。2030年末までに退去強制が確定した外国人の数を半減させることを目標に、JESTAの早期導入、難民認定審査の迅速化、護送官付き国費送還の促進などを組み合わせて実施していく方針です。あわせて、収容に代わる監理措置制度の活用や、退去を拒む送還忌避者への対応強化も進められています。
一方、難民や、難民条約上の要件には当てはまらないものの保護が必要な人(補完的保護対象者)については、審査手続の迅速化や、難民調査官の専門性を高める研修の充実を進めています。悪質なブローカーの関与による誤用・濫用的な申請への対策と、真に保護が必要な人の迅速な保護を、同時に進める方針です。
外国人を雇用する会社が今から確認したいチェックリスト
ここまで見てきた内容を、確定事項・予定・検討中の区分ごとに整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 区分 | 内容 | 確認したいこと |
|---|---|---|---|
| 在留管理DX・マイナンバー連携 | 予定(2027年〜) | 税・社会保険の納付情報等をマイナンバーで連携 | 従業員の社会保険料・住民税の手続きに漏れがないか |
| 特定在留カード | 運用開始済み(2026年6月〜) | 在留カードとマイナンバーカードの一体化 | 従業員から切替の相談があれば通常の在留カード手続きと同様に対応 |
| 技人国・留学生の実態把握 | 運用強化中 | 業務内容・資格外活動の確認強化 | 従業員の業務内容が在留資格に合っているか、留学生アルバイトが週28時間以内か |
| 経営・管理ビザ | 実施済み(2025年10月〜) | 資本金・雇用・日本語要件等の厳格化 | 新規申請予定があれば旧基準(資本金500万円等)ではなく最新基準で準備する |
| 特定技能制度 | 予定(2027年4月〜) | 支援責任者の養成講習義務化・登録支援機関の要件厳格化等 | 自社実施なら支援責任者要件、委託なら登録支援機関の対応状況を確認 |
| 永住許可制度 | 検討中 | 日本語能力・制度理解プログラム等の見直し | 確定要件ではないため、申請前に最新の公表資料を確認する |
| JESTA | 予定(2028年度中) | 電子渡航認証制度の導入 | 海外出張者・来日予定の家族への案内は制度確定後に行う |
| 育成就労制度 | 予定(2027年4月〜) | 技能実習制度の発展的解消 | 監理団体・送出機関が新制度に対応しているか確認する |
今回の出入国在留管理基本計画は、受入れの継続と管理の適正化を同時に進める内容です。大切なのは、「決定済みの制度」「実施時期が決まっている予定」「まだ検討段階の施策」を混同せず、自社に関係する部分から順に情報を追っていくことです。制度は今後も更新されていくため、実際に申請・更新の手続きを進める際は、その時点での出入国在留管理庁の最新の公表資料もあわせて確かめてください。
よくある質問
出入国在留管理基本計画とは、入管法第61条の9に基づいて法務大臣が定める、外国人の入国・在留に関する施策の基本方針を示す行政計画です。2026年7月に策定された今回の計画は、2019年に策定された第一次計画に続く第二次出入国在留管理基本計画にあたります。
いいえ、この計画自体は法律の改正ではありません。計画には、既に法律・運用として実現している事項、実施時期が決まっている予定、まだ検討段階の施策が混在しているため、それぞれを区別して確認する必要があります。
日本語能力要件や制度理解プログラムの受講などは、2026年7月時点ではまだ検討段階であり、確定した要件ではありません。一方、納税や社会保険料の支払いといった公的義務の履行は、永住許可申請の際に既に厳格に確認されており、2024年改正では許可後の取消事由としても明記されています。
出入国在留管理庁は、2028年度中の着実な導入を目指してシステム開発を進めています。2026年7月時点では、まだ運用は開始されていません。
2024年6月の入管法等改正で創設された育成就労制度は、2027年4月の運用開始が予定されています。技能実習を受け入れている会社は、監理団体の対応状況を早めに確認しておくことをおすすめします。
従業員の在留資格の内容に合った業務をさせているか、留学生アルバイトが週28時間の上限を超えていないか、特定技能を受け入れている場合は自社の支援体制や委託先の登録支援機関が新しい要件に対応しているかを確認することが、まず取り組みやすいポイントです。
はい、当事務所では司法書士業務として会社設立等の登記を、行政書士業務として在留資格・許認可の申請をあわせて対応しています。外国人雇用や会社の経営に関する在留資格のご相談も承っています。