海外資産をお持ちの方は珍しくなくなりました。
ハワイにコンドミニアムを持っている、香港やスイスの銀行に預金がある、ニューヨークの証券会社で資金運用しているなどのケース
また将来的に海外に移住したいと思う方は現地で不動産を購入されることもあるでしょう。
いまはご自身が元気で自分で考え、資産を活用していけますがいずれ自分が亡くなった後相続の問題が発生します。
海外の資産を相続する場合には日本の法律だけでなく現地の法律や手続きによって進めなければなりませんが、日本の手続きにはない特殊な手続きを要したり言葉の壁があったりと、相続人には大変な負担となるケースが少なくありません。
あまりの煩雑さやかかる経費の大きさから相続手続きをあきらめる方もいらっしゃいます。
そうなる前に事前にとれる策を打つことで安心して資産を持ち、運用していくことができます。
海外財産の保有に関する制度(国外財産調書制度)
平成25年度から毎年12月31日時点で日本国外に保有する財産の合計が5000万円を超える日本国民及び永住者は、その国外財産の種類、数量、価額等を翌年3月15日までに税務署長に報告しなければなりません。
違反すると罰則規定があります
海外相続の問題
海外の相続手続きは日本のものとは異なります。
現地の金融機関や弁護士、会計士などの専門家などとやりとりを要するほか本人確認のための交渉手続きやプロベイトと呼ばれる特有の手続きが必要となる場合があり、相続人にとってはとても負担が大きなものとなります。
税務手続きも日本と現地それぞれに行う必要があります。
プロベイト
日本ではなくなった人の財産や負債はすべて相続人に承継されますが、次に記載しているような国ではなくなった人の債権債務関係をすべて清算してから残った財産を相続人に分配するという方法がとられています。
この清算手続きをプロベイトと呼びますが、これは裁判所の関与のもとに厳格に行われるため現地の専門家の助けが必要となります。
費用もそれなりに高額となります。
プロベイトが必要な国の例
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポール、マレーシアなど
アメリカのプロベイトについて
たとえばアメリカのプロベイト手続きについてみていきましょう。
相続が開始すると相続人はアメリカの裁判所に「人格代表者」の任命申請を行います。
人格代表者はいわゆる遺言執行者のようなもので遺産の管理や手続き、税金の支払いなどを行います。
この一連の手続きは長期間を要するため日本に在住する相続人は事実上なれないので現地の弁護士などに依頼することになります。
裁判所の監督のもと人格代表者は相続財産の確定、管理、負債の支払い、税金の支払いなどを行い最終的に残った遺産を相続人に分配します。
相続人への最終配分は裁判所の許可や税務当局からの申告確認終了通知をもらって初めて可能です。
適用される法律について
日本人が国外に財産を残して亡くなると原則として日本の法律が適用されますが、現地の法律により適用される法律は異なります。
どちらの法律も適用されるという場面もありえます。
その場合には財産がある国の法律に則って手続きを進めたほうがスムーズに進むと思われます。