国際化が進む現代では、相続人の中に海外在住者がいるケースは珍しくありません。海外赴任・国際結婚・移住など、理由はさまざまです。
こうした場合、日本国内だけで完結する相続手続きとは異なり、書類の準備方法・取得先・手続きの進め方がすべて変わります。さらに、2024年4月から施行された「相続登記の義務化」により、期限管理の重要性も増しています。
このページでは、相続人が海外在住・海外居住の場合の日本国内の相続手続きについて、必要書類・流れ・注意点を詳しく解説します。
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目次
2024年施行 相続登記の義務化と海外在住者への影響
2024年4月1日から、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。不動産登記法 第76条の2
正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。実際に過料が科されるのは限られていますが、義務であることに変わりはありません。
海外在住の相続人がいる場合、書類の準備や国際郵送に数週間〜数ヶ月かかることがあります。3年という期限は一見長く感じますが、後述するように署名証明書・在留証明書の取得や書類往復だけで相当な時間を要するため、相続発生後速やかに対応を始めることが重要です。
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海外在住の相続人を外して手続きしたい
海外在住者がいると相続手続きが大変なので海外在住の相続人を相続手続きから外して手続きを進めたいと考える方もいらっしゃいます。
しかし、遺言がある場合は別ですが、遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議をして相続手続きを行う必要があります。
海外在住者を除外して遺産分割協議をしても、その協議は無効で、その遺産分割協議書に従って相続手続きを進めることはできません。
また、海外在住者の行方がわからないというケースもあります。このような場合でも、行方不明の相続人を除外することはできず、場合によっては家庭裁判所で不在者財産管理人の選任が必要になることもあります。
海外在住者が手続きから外れたい
「日本の財産には関わりたくない」「日本に戻る予定がない」という海外在住の相続人が、相続放棄を選ぶケースもあります。相続放棄をすると日本の財産の相続権がなくなり、日本在住の相続人だけで手続きを進めることができます。
相続放棄は、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。民法 第915条第1項
海外からでも手続き自体は可能ですが、国際郵便のやり取りに時間がかかるため、早めの対応が不可欠です。
(不動産・預貯金等)はありますか?
相続する意思がありますか?
→ 署名証明書・在留証明書を
取得して手続きを進める
(3ヶ月以内・
家庭裁判所へ申述)
特段の手続き不要
(相続放棄も原則不要)
日本の相続手続き|海外在住者が必要な書類とは
日本国内の相続手続き(不動産の相続登記・預貯金の解約・有価証券の名義変更など)では、通常以下の書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
- 不動産を相続する方の住民票
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
しかし相続人の中に海外在住者がいる場合、印鑑証明書・住民票は発行されません。そのため、居住地の在外公館(大使館・領事館)で代替書類を取得する必要があります。
日本で相続登記をする際は、さまざまな書類を揃える必要があります。
印鑑証明書に代えて署名証明書(サイン証明書)
署名証明書とは、日本の印鑑証明書に相当するもので、居住地の在外公館(大使館・総領事館)が、申請者の署名(拇印)が領事の面前でなされたことを証明する書類です。
- 取得方法:申請者本人が居住地を管轄する在外公館に出向き、領事の面前で対象書類(遺産分割協議書など)に署名します(拇印は必ずしも必要ありません)。代理申請は認められていません。
- 形式の選択:遺産分割協議書に綴り合わせる「貼付型(合綴型)」と、証明書のみを交付する「単独型」の2種類があります。形式は依頼する司法書士に事前確認することをおすすめします。当事務所では単独型を使うことが多いです。
- 日本一時帰国時の代替:帰国中であれば、日本の公証役場での署名認証でも対応できます。
- 在外公館が遠い場合:居住国の公証人(Notary Public)による証明が認められる場合があります。ただし認められるかどうかは手続き先によって異なるため、必ず事前に専門家に確認してください。
住民票に代えて在留証明書
相続によって不動産を取得する場合、登記申請時に新しい所有者の住所を証明する書類として住民票が必要になります。海外在住で日本の住民票がない場合は、その代わりに居住国の日本の在外公館発行の「在留証明書」が必要となります。
- 取得方法:居住地の在外公館で申請します。パスポートのほか、賃貸契約書・公共料金の請求書など現地での居住を証明できる書類が必要です。
- 戸籍の写し:在留証明書に本籍地を記載するため戸籍謄本の写しが必要です。
- 目的、提出先:目的は登記または相続手続き、提出先は法務局としますが、ここの記載内容はそれほど気にすることはありません。
海外在住の相続人が外国籍を取得している場合
海外在住の相続人が外国に帰化して外国籍を取得している(あるいは元々外国籍の)方がいることもあります。この場合には相続手続きはさらに複雑になります。
外国に帰化すると日本国籍を離脱して戸籍が無くなっているので、戸籍謄本以外の方法で相続人であることを証明する必要があります。また、ほとんどの国で印鑑証明書や住民票が出ないので、それらに代わる書類が必要です。もともと外国籍の方も同様です。
この場合、日本国籍でないため、現地の日本領事館で署名証明書や在留証明書を発給してもらうことはできません。聞いた話では、日本の在外公館で日本のパスポートや居住国に滞在できるビザの提示を求められ、それらを提示できないとその国の国籍を取っていると見られ、日本の在外公館で証明書の発給を断られるとのことです。
韓国や台湾のように、印鑑証明制度や住民登録制度、戸籍や家族登録の制度がある国の場合は、これらの証明書を取得して相続手続きに利用できます。ただし、完璧なものが揃うとは限らないので注意が必要です。
韓国や台湾以外の国では、別の対応が必要です。
日本の戸籍謄本がないため、相続人であることを証明するために、出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書など、本国の公的書類が必要になります。さらに、一般的には、必要事項を1通にまとめた宣誓供述書を作成し、これに現地の公証人の面前で署名し、認証を受けたものを利用するのが一般的です。宣誓供述書には、日本の相続手続きで証明したい内容を、日本の法務局や金融機関で受け付けられるように記載します。
外国語で作成された文書は、日本語への翻訳文が必要になります。外国の公文書にアポスティーユや領事認証は、日本国内での手続きでは、基本的に必要ありません。
海外在住相続人の必要書類 早わかり表
| 相続人の状況 | 代替対象の書類 (日本在住者の場合) |
必要となる代替書類 | 発行機関 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 海外在住の 日本国籍者 |
印鑑証明書 | 署名証明書 (サイン証明書) |
居住地の在外公館 (大使館・総領事館) |
領事の面前での署名が必要。代理申請不可。帰国中は日本の公証役場でも可。貼付型か単独型かを事前確認。 |
| 住民票 (不動産相続時) |
在留証明書 | 居住地の在外公館 | 署名証明書と同時申請が効率的。賃貸契約書など居住を証明する書類が必要。取得まで時間がかかることも。 | |
| 海外在住の 外国籍者 (帰化・元外国籍) |
印鑑証明書・住民票 | 宣誓供述書 (Affidavit) +署名・住所証明 |
本国の公証人 (Notary Public等) |
日本の在外公館では発行不可。宣誓供述書の記載内容は専門家との事前確認が必須。 |
| 戸籍謄本 | 出生証明書・婚姻証明書等 +日本語翻訳文 |
届出地の公的機関 | アポスティーユ・領事認証は日本国内手続きでは原則不要。 | |
| 韓国・台湾籍の方 | 印鑑証明書・住民票・戸籍 | 印鑑証明書・住民登録謄本・家族関係証明書等 | 韓国・台湾の役所等 | 両国は日本と類似の制度あり。ただし書類形式が異なる部分もあるため専門家確認が必要。 |
実務上の3大障壁|時間・コミュニケーション・国際送金
海外在住の相続人が関わる手続きには、特有の困難さが伴います。
① 時間的な制約
署名証明書や遺産分割協議書などの書類を海外の相続人と郵送でやり取りする場合、往復だけで数週間以上かかることも珍しくありません。相続登記の義務化(3年以内)や相続税申告(10ヶ月以内)の期限を考えると、迅速に進める必要があります。
書類の往復郵送だけで往復3〜6週間以上かかることがあります。在外公館の予約が混み合っている地域(ニューヨーク・ロサンゼルスなど日本人が多い都市)では、予約がかなり先になってしまうといったケースもあります。
相続税申告の期限(死亡日から10ヶ月以内)と相続登記の義務期限(3年以内)の両方を意識した早期対応が不可欠です。
②コミュニケーションの問題
物理的な距離と時差:があるため、直接会って話すことが難しく、電話やオンライン会議を行うにも時差の調整が必要です。
また、相続財産の詳細や日本の法制度について、海外在住の方に正確に理解してもらうのが難しい場合があります。特に海外在住の方が財産の相続を望まない場合、相続手続きに非協力的ということも珍しくありません。こういった事情が遺産分割協議がスムーズに進まない原因にもなり得ます。
③国際送金の難しさ
相続した預貯金や、不動産の売却代金を海外の相続人の口座に送金する場合、銀行での手続きに手間がかかります。マネーロンダリング防止の観点から、銀行の国際送金手続きが年々厳しくなっています。
国際送金をする際に、日本の銀行で送金の根拠となる書類を求められ、また海外で受け取る際にも証拠となる書面を求められることがあります。銀行での手続きがうまくできないと、一旦送金したお金が戻されてくることすらあります。
海外在住の相続人がいる相続手続き、まずはご相談ください
書類の取得方法がわからない・どこに頼めばいいかわからない、といったご不安も含めてお気軽にどうぞ。
電話・メール・LINE・オンライン(Zoom等)でお問い合わせしていただけます。
相続人全員が海外在住の場合
相続人の一部が海外在住の場合は、日本にいる相続人が手続きを主導できます。しかし、相続人全員が海外在住の場合や、日本にいる相続人が高齢・病気で動けない場合は、誰が主導して手続きを進めるかという問題が生じます。
このような場合には、司法書士などの専門家への委任がもっとも現実的な選択肢です。当事務所では遺産承継業務として、手続き全体を一括して代行しています。
特に、相続人全員が海外在住で今後日本に居住する予定がない場合、日本国内の財産を換価処分(現金化)して海外の相続人に送金するというご要望が多くあります。当事務所では、換価した遺産の海外送金手続きまで対応しています。
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズのサポート内容
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズは相続人が海外在住の場合、次のようなサポートを一括していたします。
- 相続による不動産の名義変更登記申請
- 預貯金・証券口座の解約
- 不動産の売却処分のサポート
- 遺産分割協議書の作成及び翻訳
- 宣誓供述書など認証を受けるための書類作成
- 海外在住の相続人との連絡事務(英語対応可)
- 海外への送金事務
- 外国語文書の翻訳
他の士業・専門家の方からのご相談も歓迎します
当事務所には、弁護士・税理士・行政書士などの士業の先生方や、他の司法書士事務所からも、海外在住の相続人が絡む案件についてのご相談・ご依頼をいただいています。宣誓供述書の作成方法や外国籍相続人への対応など、専門家同士の連携・サポートにも積極的に対応しています。
「担当案件で海外絡みの相続が発生したが、対応方法がわからない」という場合も、まずはお気軽にお問い合わせください。
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