日本人が中国人の子と国際養子縁組してビザを取得した事例

中国にいる身内が未婚で出産し子どもを育てているが、中国でシングルマザーが子どもを育てるのは日本以上に大変で、将来が全く見通せないので、子どもを養子として迎え入れて、日本で養育し教育を受けさせたい。という相談が、同業の司法書士の紹介でありました。

相談者は、夫婦とも現在は日本国籍で、日本で十分な収入を得て生活しています。
一方、養子になるのは、1才の中国籍の子です。

相談者が知りたかったことは、次のようなことでした

  • 日本人と中国人で国際養子縁組ができるか
  • 養子縁組できるとすればどのような書類と手続きが必要か
  • 養子縁組後に日本の在留資格を取得できるか

国際養子縁組手続きをする場合の検討事項

養子縁組の準拠法

まず、国際養子縁組には、どの国の法律が適用になるかという準拠法を決定しないといけません。

日本の法の適用に関する通則法(通則法)31条によれば、「縁組の当時における養親となるべき者の本国法による」とされているので、養子縁組の実質的成立要件については養親の本国法である日本法が適用されます。

また、養子縁組の方式については、通則法34条に「当該法律行為の成立について適用すべき法による」とされており、これも日本法が適用になります。

つまり、日本法に基づいて国際養子縁組の手続きを進めれば良さそうです。

養子の保護要件

通則法31条で「養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。」と規定されています。

これを「養子の保護要件」といいます。

養子の保護要件については、養子の本国法である中国法が適用になるので、中国法も調べなければなりません。

家庭裁判所の管轄

本件は未成年者を養子にするので、日本では家庭裁判所の許可が必要です。養子縁組許可申し立ての管轄は、養子の住所地とされていますが、養子は国外に居住しています。この場合の管轄がどこになるのかという問題もあります。

在留資格

在留資格については、定住者の告示7号に「日本人の扶養を受けて生活するこれらの者の六歳未満の養子」なので、定住者の在留資格を申請できそうです。

神戸リーガルパートナーズのサポート内容

まず、家庭裁判所に養子縁組許可の申し立てをするのに、養親の住所地を管轄する家庭裁判所に問い合わせをしたところ、裁判所でも調べてくれて、結果その裁判所で受け付けるとの回答があったので、書類を作成して提出しました。

家裁に提出した中国の養子に関する書類は、日本の戸籍謄本の代わりになりそうな養子の出生公証書と家族関係公証書です。

家裁の書記官と「養子の保護要件」について解釈が異なったため、追加で資料を提出しましたが、それで納得されたのかそれ以上は何も言われることはありませんでした。
しかし、それでも家裁の手続きにかなり時間を要しました。調査官が養親の自宅を訪問し、また中国から養子と母親を呼び、時間をかけて話を聞くといった調査が行われ、最終的に養子縁組の許可が無事出ました。

その後、養親の居住地の役所に養子縁組の届出をし、戸籍謄本に記載された後に、入管に在留資格認定証明書の交付申請。在留資格の審査に1か月程度はかかると思っていましたが、10日程で3年の定住者(告示7号)が認められました。

神戸リーガルパートナーズは司法書士と行政書士の資格があるので、家庭裁判所の手続きから在留資格までワンストップで国際養子縁組を完了させることができました。

日本人と中国人の国際養子縁組については、詳しく書かれたものがあまり見当たらないのですが、「日本人が中国人を養子とする場合の取扱いについて(平成22年6月23日付け民一課長通知)」の解説(戸籍第849号)が一番詳しいんじゃないでしょうか。

この記事を読んで、当事務所に養子の斡旋の問い合わせをして来られる方がいらっしゃいますが、当事務所は司法書士・行政書士事務所で、養子の斡旋をする事務所ではありません。また、そのような養子の斡旋をする団体等は一切知りません。