香港から死亡証明書の取り寄せ

中国籍の方の相続登記のご依頼で、相続人の中に香港に渡って香港で亡くなった方がいらっしゃるという事例がありました。

登記申請では、この方が亡くなったことが分かる書類の原本が必要です。依頼者の方は、香港の死亡証明書の写しをお持ちでしたが、原本はありませんでした。

「香港に親戚はいるが協力はしてもらえないと思う。」とのことでしたので、日本から取り寄せできないか調べてみました。

香港には日本のような戸籍制度はないので、戸籍謄本で死亡の事実を証明することはできません。代わりに出生、死亡、婚姻などの証明書が下記役所から発行されます。

Hong Kong Immigration Department

日本から香港の死亡証明書の申請

上記サイトを見ていると香港域外からの申請でも証明書が交付されそうです。ただ、誰でも申請できるのか、一定の関係がないと交付されないのかそのあたりが分からなかったので、メールで問い合わせをしてみたところ、香港から次のような回答が届きました。

Anyone can submit an application for search of death records and a certified copy of a death entry.

これを読む限り、誰でも申請できるようにも読めます。

手続きは、まず死亡記録の検索を申請し、情報を得てから死亡証明書の申請をするようですが、今回は死亡証明書の写しがあったので、それを添付してそのまま申請することにしました。

申請書に依頼者がパスポートと同じ署名をし、パスポートの写し、手数料・郵送料相当の小切手を同封してEMSで香港に送付しました。少し郵送料を多めにしていたので、小切手の額が少し多いけど、これは返金しませんというメールが届き、申請書を送付して1か月程して死亡証明書が届きました。

最難関は小切手の作成

日本から死亡証明書の申請をして費用の支払いをするのに、香港では小切手しか受け付けていません。

ところが、北朝鮮への経済制裁の影響で、中国政府が北朝鮮政府を支援しているということで、中国への送金も厳しくなっていて、わずか数千円の小切手を作るのも難しくなっています。

当事務所の口座から出金して作ろうとしたのですが、現金の入金がある口座だとその入金をいちいち説明しないと手続きすらできません。司法書士をしていると、現金で報酬などをいただくことも少なくありませんので、事実上司法書士の口座から中国向けの小切手を作るのは不可能だと感じました。

そこで、依頼者に説明して銀行に行っていただいたところ、数日で小切手ができました。

給料か年金で生活しているような方で、入金は振込のみという口座をお持ちでしたら、中国向けの小切手を作れる可能性があります。一方で現金の入金もある口座しかない場合は、小切手を作るのは難しいでしょう。

小切手が作れれば日本から香港の死亡証明書の申請も可能ですが、そうでなければ誰かが直接香港まで行くしかないのかもしれません。

外国籍の方の相続手続き