共有者が多数の空き家を共有物分割して売却した事例

遺贈により不動産(の持分)を取得したが、建物は老朽化しており誰も住む予定がないので、名義を変更して売却したいという相談がありました。相続が複数回発生しており、共有者が多数いると思われますが、相談者では調査もできないので困っていました。

詳しくお聞きすると、不動産の名義人は亡くなり、その妻と兄弟姉妹(または甥姪)が相続人になり、相談者はその後妻から公正証書遺言により不動産の持分の遺贈を受けていました。
相談者の持分は4分の3、他の相続人の持分は合計で4分の1です。

不動産業者に査定を依頼したところ、不動産業者が先走って買い主を見つけてきましたが、買い主は決済を急がないので解決までしばらく待てるとのことでした。

検討事項は次のとおりです。

  • 相続人の確定
  • 相談者の単独名義にして売却するにはどうするか

当事務所のサポート内容

他の共有者(不動産の登記名義人の相続人)を確定したうえで、共有物分割(価格賠償)により他の共有者から共有持分を取得して売却できないかと考えました。

不動産の名義人の相続人を調査したところ、相続人は10人超です。

当事者が多く一度に話し合いをするのは困難かもしれませんが、まずは簡易裁判所に共有物分割の調停を申し立ててみました。

調停期日には一部の共有者のみが出席したのみでした。全員が出席しなかったため共有物分割の協議はできず、共有物分割調停は不成立となりました。

しかし、裁判所が出席した共有者と話し合いの場をセッティングしてくれたので事情の説明をしたところ、調停に出席された方はみなさん持分を売却することには同意してくれました。そこで、まずは調停外で持分を買い取り、登記名義を依頼者に移しました。

その後、残りの共有者を被告にして、簡易裁判所に共有物分割の訴訟を提起。

簡易裁判所では、裁判官から「複雑そうだから地裁に移送しますね。」と連絡があり、期日を開くことすらなく地方裁判所に事件が移送されてしまいました。
依頼者と相談し、まずは1回目の期日に依頼者本人が原告として出廷して様子を見て、裁判が長期化しそうだったら弁護士に依頼することも検討することにしました。

第1回目の期日には被告のうち1名が出廷していましたが、裁判官が「共有物分割の裁判なので裁判所はどのように分割するかを決めることになる。不動産の査定金額に異存がないようなら、原告申し立てのとおりとしたい。」と言われ、被告も金額に異議はないと述べたため、即結審となりました。

その後、判決に従って持分移転登記を申請して依頼者の単有としたうえで、無事に売却することができました。

最初の相談から解決まで1年程度かかりましたが、無事解決にこぎつけることができ、依頼者の方にも喜んでいただきました。